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少年少女は荒野をめざすのか

2018年10月21日。

神奈川近代文学館にて、寺山修司展記念トークイベント「少年少女たちの行方ーー寺山修司の21世紀」に参加してきました。ので、簡単なレポを。

※私の主観におけるレポートになります。可能な限りフラットに参加したつもりですが、大なり小なり発言を歪曲して受け止めていることもあり得るかと思いますので、ご容赦ください。



14:00ピッタリに照明が落とされ、『少女革命ウテナ』の映像がスクリーンに流れます。有名な決闘広場へ向かうバンクシーン(エレベーターVer.)。映像が終わると壇上にはお三方が。こういうトークイベントに参加するのは初めてだったんですが、アナウンス通りの時間で始まることにちょっと感動しました笑。

寺山、シーザーさん、幾原監督の作品をいくつか見直し、聞き手の三浦雅士さんの本も事前に何冊か読んだりと、かなり準備していたのでお話は大体呑み込めました。情報としては本に書かれていることがほとんどだったし、それこそ、以前、シーザーさんと幾原監督が行ったトークイベントのレポとかなり重複する話が多かったです。逆にそうしたサブテキストを知らない人には理解しづらい話だったかもしれません。

はじめに三浦さんから、会場一帯が「ウテナの舞台である鳳学園にそっくりでは」という指摘があり、監督も放送前にロケハンしていたことを明かしていました。近代文学館の目の前がローズガーデン(薔薇園!)だったり、文学館?の構造が似ていたり…。港の見える丘公園以外にも、横浜周辺の公園はウテナを思わせる風景が多くありました。元町から横浜駅まで歩いて帰ったんですが、横浜駅周辺は道路しかなく(マジでコンビニすらない)、その中でみなとみらいは正に「永遠があるという城」といった感じで浮きまくってました。文学館、というより横浜全体がモデルの一つだったのかも。都市と物語の構造が似ているというか。

一応、イベントタイトルの一つの結論は、インターネットメディアの発展、それに適合するために生じる承認欲求は60年代にTVメディアと共に登場した寺山と重なる…といったところだったかと。ただ、明確に提示されるには時間の経過が必要な問題提起なので、正直カタルシスは得られませんでしたが…。

生前の寺山と直接関わっていたお二人、そして寺山の熱狂的なファンであった監督が揃っているにも関わらず、話題の方向が定まらなかったのは、監督のファンに向けた気遣いだったのかなと思いました。寺山のフォーマットを利用しようが万有引力の音楽を起用しようが、結局はアニメはアニメファンが受容するものだし、監督が仰っていたように「寺山の舞台のすごさは現代には伝わらない」んですよね。平成生まれの私にはそれはわからないし、時代背景として学生運動が話題に上がっていましたが、本当に現代の若者に学生運動は理解されづらい。そうした世代間の断絶を描いていた『輪るピングドラム』が全く俎板に乗らない、というのもちょっと皮肉な話でしたが…。

観客の寺山受容が把握しきれていない中、作品論ならともかく、作家論を90分程度でまとめるというのがそもそも無理な話で。そういう苦しい状況の中、深く話を切り込み続けていた三浦さんの機転の良さには感服しましたし、監督の「今のアングラ演劇は死に向かうけど、寺山さんは最後には生に向かっていく」という考察には実作者ならではの説得感がありました。そしてシーザーさん。お話されている姿を拝見したことがなく、見た目の印象からてっきり「The アーティスト」な人かと思っていたんですが、想像以上にユーモラスな方なんですね笑。二人がヒートアップしていく中、会場の空気をフラットにしてくれて、第四の壁を破壊しまくってる感じがたまりませんでした。まさに寺山イズムの後継者?

最後の質問の場に顕著に感じられましたが、ほとんどがメディアに関わる質問で、トリックスターたる寺山っぽいなと興味深かったのと同時に、寺山の普遍性についてはイベント全体を通してあまり語られなかった気がします。アジテーションは普遍的といえば普遍的なのか?ただ、寺山のアジテーションにそれほど感化されない自分からすると、そうした「事件性」以外の作家性から寺山を掘り下げてもらいたかったかも…贅沢な話ですが。

「寺山は演劇を愛していたのか、それとも憎悪していたのか」という話の続きも聞きたいし、もしまた(三浦さん曰く)3.5人の座談会が催されるなら、観客に気兼ねなく話を広げられそうな雑誌上の対談形式なんかで読んでみたいなと思いました。



三浦さんの著作でいうと、やはり寺山論は今回の話に直結してました。「懐かしさ」や作家性のお話はイベントでは掘り下げられませんでしたが、この本で補完できるかと。

寺山修司―鏡のなかの言葉

寺山修司―鏡のなかの言葉


三浦さんの『青春の終焉』も良いですが、『輪るピングドラム 』のサブテキストとしても非常に優秀だと思うこれを。若者のドグマの行き場のなさ、21世紀の少年少女の行方、というテーマも書かれています。「学生運動ってなんじゃそら」という方にも入門として入りやすいかも。

※残念ながら絶版でプレミア化していますが、教育心理学に分類される内容の為、図書館には割と置いてあるかと思います。

ポストモラトリアム時代の若者たち (社会的排除を超えて)

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