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デヴィッド・ボウイ試論 ; トリック・オア・トリート

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好きなアーティストは、と聞かれると、なんだか口ごもってしまって、つい「デヴィッド・ボウイ」と答えてしまいます。

ボウイとか寺山とかゴダールとかってなんか便利なんですよね。プラスチック・ソウルとか言ってるような人は色々なスタイルを自分に取り込んでアウトプットしていたから、ボウイのディスコグラフィ≠60's後半〜10's中期なわけで。浅く広く手を広げまくってる自分を説明する代名詞的な存在というか。

実のところ、彼の音楽のすべてを好きなわけではなくて…本当に好きなのはジギー以前の四作なんですよね。個人的にジギー以降はビートの単調さについていけない瞬間があるます。どうしそこまでボ・ディドリーにこだわっていたのか、未だに理解できなかったりするし。ベルリン三部作は歌モノよりもインスト(『ロウ』『ヒーローズ』B面)をよく聴くし、その頃に限って言えば、ボウイよりもブライアン・イーノの方が好きなのかもしれない。

ボウイのスタイルというのはなかなか一言では説明しづらいんですが、その中でもリズムに言及している人は驚くほど少ない気がする。遺作『★』に関して、冨田ラボが興味深いことを話しているくらい。ただ、「ジャズではなくロック」と冨田ラボは言っていますが、ボウイにはロック、ロックンロールのイディオムすら血肉化されていないのではないかと思ってしまう瞬間がある。

『ピンナップス』はボウイのルーツを示したカバーアルバムとされてますし、世代的にもロックンロールがボウイの出発点と考えるのは自然な流れなのかもしれない。でも、第一次ブリティッシュロックムーブメントの中でボウイは突出できなかった。彼はデッカレコーズから何枚かシングルをリリースしたものの鳴かず飛ばずだった。ソロの1stアルバムをリリースした後、俳優としてのキャリアスタートを挟み、よく知られた「デヴィッド・ボウイ」のイメージが世間に登場。月面着陸という時代のムーブメントを半ば利用する形で書いた「スペース・オディティ」がヒット。この「スペース・オディティ」に至るまでの経緯は無視されがちで、1stに関しては「サイケポップっしょ」みたいに軽く扱われがちなんですよね。パブリックイメージから程遠くないはずのアルバムなんですけど、やっぱりロックという括りからは語られにくいのかもしれません。セールス的にも失敗だったぽいし。



なぜボウイは最初から成功を収めることができなかったのか。ロックンロールの才能がなかったのか?それでは後のグラム期の成功について説明がつかない。少なくとも、成功の芽生えはあったにせよ、開花はその時ではなかったのかもしれない。

というのも、前述のボウイの1stアルバムを聴いてわかる通り、ポール・マッカートニーに通ずるブロードウェイ仕込みのポップセンスがすでに見出せるわけで、ロックンロールだけがボウイの音楽的資質を育んでいたわけではないんですよね。その中にはジャズもあればフォークもある。一概にロックの人とは言い切れない。

とっつきにくい1stを踏まえて考えると、ボウイは脈々と連なるポップスの文脈の中にあって、ロックンロールはその一部であったと見るべきではないか。その在り方は2ndアルバムの時期にロールモデルの一つとして参考にされていたボブ・ディランに近いのではないか。フォークロアのシンガーとして、「私」よりも「アメリカ」を主体としている彼に。

加えて、俳優としても同時期に活動を始めたことも鍵になっていて。リンゼイ・ケイプの元で、道化としてのパフォーマンスを学び、『世界を売った男』、『ハンキー・ドリー』を経て遂にジギー・スターダストのペルソナを獲得する、という流れがあって。自身のパーソナリティを一次元的に表現するよりも、他者や時代から参照点を得、多層のレイヤーを表現する手法を選んだのではないか。

ジギー期のアンサンブルにミック・ロンスンが多大に貢献したことはもはや言うまでもないですが、それに加え、ボウイの魅せ方が巧みだった。下地はあったにせよ、やっぱり演技に触れたことで大きく開花したのだと思います。ジョン・レノンの言を借りるまでもなく、「グラムロック=口紅を塗ったロックンロール」で、少なくともボウイのスタイルは良質なパロディだったんじゃないでしょうか。

ジギーに至る以前の二作はロックンロール一辺倒ではなくて、ハードロック寄りの『世界を〜』はともかく(大好きですけど)、『ハンキー・ドリー』はトニー・ビスコンティのプロデュースとボウイの多彩なソングライティングが見事に合致した、70年代を代表するポップ・アルバムになっています。まぁボウイファン以外にはいまいち浸透してない気もしますけど…。録音は『ジギー』と同時期なのでややこしいですが、だからこそ彼の演出がいかに徹底されていたかがわかる。SF的な「ライフ・オン・マーズ」や非常にジギー的な「クイーン・ビッチ」を『ジギー』に収録しなかった辺り、その美学は徹底されています。



全部好きなわけではない、とは書きましたが、不思議と「デヴィッド・ボウイ」の音源だと意識しなければすんなり聴けたりします。ボウイの声は独特だと言われるのに、自分にはそうでもないらしい…。ただ、そのスタイルに関しては現在でも類を見ない特異な人だったと思います。

ボウイに関する文献を読み解いて書いているわけではないので、試論つうかマジで私論なので、折を見てまた書きたい。タイトルはまぁ適当っす。意味があるような、ないような。


最後に、勝手にボウイのレクイエムだと思っている曲を。良い曲。

https://youtu.be/h4xq7zLWlbM