眠りにつく10秒前。

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誰かと映画を観るのなら

バレンタインの日に書けばいいのに、なぜか今、デートムービーについて書こうと思った。

デートムービーの定番といえば、ちょっと前まで『アメリ』という印象だった。なんとこの映画、観るだけで人を発情させるらしい。『ドグラ・マグラ』並みのデマだが、それくらいオススメということなのか。かなりゲスい表現に面食らい、なおかつメインビジュアルの笑顔がどことなく恐いというのもあって、未見のままだ。

最近はロマンチックなラブストーリーに限らず、「誰もが楽しめそうな」、広範のエンターテイメント作品が好まれているようだ。大半の劇場で公開中の作品を紹介している記事を除いても、あまり『アメリ』は検索でヒットしない。レンタル店では未だに面出し(というのか?)されてる人気作ではありますね。

「誰もが楽しめそうな」という基準は、一見失敗は少なそうだし、自分のセンスの善し悪しを疑われずに済むので、妥当な選考ではある。ただ、私の場合、そういう選び方をすると悉く失敗をしてきた。「こういう映画ならふたりとも楽しめるんじゃないかな〜」と割と期待値高めで臨み、鑑賞後、あまりの出来の悪さに(しかも無駄に静かな映画だったので)劇場のロビーで食べきれなかったポップコーンを貪り食い、なんとか憂さを晴らした。クリスマスだった。それ以来、私はデートの際に観る映画は完全に独断で選ぶようになった。ジャームッシュクストリッツァトリュフォー、『美しい星』や『FAKE』などなど…。

そういう惨めな経験から、あまり万人に推奨される作品は避けるようになってしまったのだが、「デートムービーに最適」的なリストをあらかた消化してしまった人に向けて、ちょっと違う角度から提案してみたい。

「誰もが楽しめそうな」映画は、大抵質の高い映画だろう。これの逆をいく、つまり、なるべくB級的な作品を選んでみた。ここで言うB級というのは、ハリウッド云々、低予算映画云々という正しい意味合いではなく通俗的な意味合いで用いる。作り手たちはいたって真面目なのになぜか笑えてしまうおバカ映画、そのおバカのBをとった、愛すべき迷作たち。真面目な良作というのはこちらも肩肘張ってしまったり、映画に親しみのない人には眠気を誘発したりする。よほどの映画好き同士でなければ、家でまったりDVD鑑賞しようにも黙って2時間程モニターを眺めているというのは、割に疲れる。まして、付き合いたてのカップルなんかだったりすると余計だ。それよりかは、いくらか親しみやすい、時にはツッコミを入れつつ楽しめる隙の多い作品を三本ほど選んでみた。デートに限らず、友人や家族など、人と一緒に観る映画のネタが切れたらなんとなく参考にしてみてください。


ガントレット

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クリント・イーストウッド監督の初期作品はどれもB級感があって最高だ。もの凄い速さで銃の達人になり、なぜか唾を吐きまくる『アウトロー』も捨てがたいが、『ガントレット』は群を抜いて狂っている。

今作の見所はなんといっても脚本のひどさだ。冒頭からよくわからないまま主人公とヒロインは追われる身となり、浅はかな考えで行動しまくり、挙句確実に死ぬという危険な目に遭っても必ず生き延びる。『ダイ・ハード』のような超人的パフォーマンスなしに。ここまで清々しいご都合主義があっていいのだろうか。おそらく画としての魅力を優先し、脚本はかなり手が加えられたのだろう、明らかに異常だ。ラスト近く、一連の大型バスのシーンなんて、『激突!』の無人トラックよりもある意味恐ろしい。有人であるから余計に。

もうひとつの魅力が配役。主演は当然イーストウッドだが、ヒロインは当時の愛人であったソンドラ・ロック。誰にも正しさを理解されない二人が愛を育む様を見せつける展開は同じ配役の『アウトロー』、『ブロンコ・ビリー』と比べてもその公私混同ぶりがすごい。この二人の関係性がよりラストの恐ろしさを助長しており、社会を完全に見限って、まるで「生き延びた俺たちを認めないわけにはいかないよな?」という脅迫じみたものになっている。

こんな映画、一人では消化しきれない。馬鹿馬鹿しさに大いに笑い、感動的というより不気味に思える結末に、どうか手を取り合い震えてほしい。


『アップサイドダウン 重力の恋人』

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こちらはSFラブストーリー。二つの惑星がお互いの重力で引き合って存在している的な。搾取する側とされる側に二分されてるディストピア的な。空見たら逆さまの大地に人が立ってるよ的な。

この映画の世界設定は、恋人二人の物語を視覚的に盛り上げるための舞台装置に過ぎない。どう考えても搾取される側の資源が豊かなのにされるがままなのはおかしいし、随所に使われるダンスホールを要したレストランには上にも下にも人がいて、干渉してはならないって掟どこいったんだよ馬鹿かよ、とそれほど脚本の齟齬を気にしない人間でも粗に気がつくくらいだ。色々ごちゃごちゃ説明されるが、そもそも論理的に破綻しまくってるので適当に聞き流していい。

とにかく監督が撮りたい画を撮っていて、その点では『ガントレット』と近いが、狂気はそれほど帯びていないので、こちらの方が安心して観られる。

ロマンチックなシーン満載ながら、酔いしれる前に自らムードをぶっ壊す、それは痛快なのか何なのか。凡人には理解が及ばないあたり、もしかしたら天才なのかもしれませんね。


『ももドラ momo+dra』

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ももクロ主演作品だったら『幕が上がる』の方が間違いなく良作だろう。しかしここでは『ももドラ』を推したい。

厳密に映画として作られた作品ではなく、メンバー一人一人にフォーカスを当てられた短編ドラマシリーズをオムニバス形式にまとめている。ドラマから映画というと岩井俊二監督『打ち上げ花火 下から見るか、横から見るか?』のような経緯だが、比較するのも可哀相なほど…。いや、ももクロに非はないんですよ、念のため。

どの話も割と酷い出来だが、白眉なのが紫担当高城れにの話。アイドル映画とはいえ恋愛相手役は普通に(?)登場するのが常だが、この作品では、相手役だけが不自然なほど無機質に描かれている。映画やドラマというより彼女のイメージビデオという体らしい。だったら恋愛絡めない話考えろよと突っ込みたくもなるがじっと我慢して鑑賞を続けよう。二人は美術部なのか絵画に親しんでおり、ふとしたきっかけで出逢い、彼は彼女の肖像画を美術展に出品する、という淡い恋心の芽生えを追った一見爽やかなあらすじ。なのに、肝心のその絵がまったく爽やかに感じられないのだ。おぞましいとさえ視聴者は捉えるはずなのに、作中では「いい絵だね」なんて感じで素朴に受け止められてる。笑うしかない。

作品の捉え方は人それぞれ、もうデートムービーとかどうでもいいから、これでおかしいと思わない人がいたら教えてほしい。


ひとまず珠玉の三本を紹介してみた。脚本がめちゃくちゃな作品ばかりなのでネタバレしたところで問題はないのだけど、一番衝撃的なところは一応伏せた。文中に書いていて思い出した『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズも確信犯的ながらおすすめです。ホラーが得意な方も苦手な方もぜひ。